よく巷ではダイビングをするのに必要なライセンス、と言われるが、ダイビングサービスを利用するのに必要な認定証、Cカードは、民間団体が独自に決めたルールに従って、その基準を満たしていますよという認定をしたのであって、いわゆるライセンス、法律によって認定され、取得せずにある行為を行うと法に触れてしまう免許証とは本来の意味では別なものになる。
 ちょっと回りくどい言い方をしてはいるのだけど、ダイビングの資格認定についてすこし掘り下げてみようと思う。

 もちろん、一アマチュアダイバーの、個人的な感想という立場からなので、センシティブな部分にも踏み込んでしまうかもしれないけれど、もし気になる方はご指摘をいただけたらば幸甚でございます。
 便宜上、ライセンスという言葉のほうがわかりやすそうなので、ここではあえてライセンスという言葉を使うことにしよう。

海には誰だっていつだって入れる

 さていきなりそのライセンスの存在意義を否定するような見出しで恐縮だけれどもそういうわけではない。

 海といえば、あたりまえだけれど、そこに危険の有る無しは置いといて、いつでもいろんなところに存在していて、入るのに鍵がなければいけないとかいうわけではない。
 入ろうと思えば、どんな形でも入ることはできてしまう。
 何かしらの法律が特に直接的にあるわけではなくて、タンクがあってもなくても、マスクやフィンをしなくても、水着を着なくたって、海に入ること自体は可能なんだ。

 ただ、危ないことになる可能性がある。

 服を着たまま海に入ると、服が水を吸ってものすごく重くなる。
 ジーンズなんか大変なことだ(経験者-_-)
 その海域のことを知らないで海に入り、離岸流に乗ってしまったりなんかしたらもう大変だ。
 離岸流の存在も、知らなければ危険に巻き込まれる可能性があがる。

 海のことや、海の危険なことを知らないでその中に入るということが、どれだけ危ないのかということすらも、知らなければ想像もできないということになる。

 そこで安全に、海を楽しむにはどうしたらいいか。

 知識や技術を持っている人に一緒にいてもらうか、それらを自分で身につけるかのどちらかになる。

潜るだけならライセンス(Cカード)はいらない

 ただ単にダイビングをする、ということに限って言えば、ライセンスを持っていなくても可能ではある。
 体験ダイビングというサービスがあり、知識や技術のない人でもダイビングを楽しめるようになっている。前述した、知識や技術を持っている人、つまりインストラクターに一緒にいて貰う形だ。

 本人はしっかりとした技術や知識は必要なく、管理された状況の中で海を楽しむことができる。

 この場合、当然だがあまりにも過酷な海に入ることはできない。
 どれだけ屈強なインストラクターであっても、例えばものすごい流れの中で知識も経験もない人間を連れてお互いの身の安全に責任を持てるのかといえば、それが無理なことはダイバーならよく分かる。
 インストラクターさんの持つ知識や経験にしたがって、安全な範囲内で楽しむことになる。

 この状態のメリットは、
  ・難しいことを考えなくていい
  ・責任をある程度人任せにできる
  ・ある程度安全が確保されている
 ということだろう。
 デメリットは、その可能性がある、ということも含め
  ・更に広い範囲のダイビングを楽しむことができない
  ・自由にダイビングを楽しむことができない
  ・危険を認識せずに潜ることになる
 ということではないだろうか。

 個人的には、このデメリットの3つ目、危険を認識しないでその中に入るという部分がものすごく怖い。
 本人は、楽しいのだろうけれど、一歩間違うと命の危険があるということをわかった上で、危険なことをせずに、しっかり楽しめるようになるのが、兎にも角にも一番安全で健全なんではないだろうか、と、個人的には、思う。

 もちろん体験ダイビングというサービスを提供するためにはしっかりと資格を持ったものでないと提供していいはずはないし、事前にしっかりとその危険性、対処法についての説明があるので、それを正しく理解しておけば最低限大丈夫のはずではある。

 けれど最大のメリットは、やはり難しいことを考えなくても海の素晴らしさを垣間見ることができることなんだろうと思う。

ライセンスを取得するとできること

 さて、ではライセンスを取得すると、何ができるのか。

 各団体それぞれ名称は違うが、概ね最初の入門認定レベルだと、バディ同士で18mまで潜ることができるようになる、とある。
 つまりガイドさんなしで、自分たちだけでダイビングをするだけのスキルの認定をした、ということになっている。

 体験ダイビングでは、インストラクターの管理が必須であったが、ライセンスを持つことによってその必要がなくなるのだ。
 また、体験ダイビングでは概ね数mの深度までしか潜らせてもらえないのに対し、認定を受けることによって18mまで潜れる技術があると認められることになる。

 ただ、体験ダイビングであっても、先にも書いたように海に鍵がかかっているわけではない。潜ろうと思えば18mだってなんだって潜れてしまうのだ。

 問題は、それをすることのリスクをきちんと分かっているかどうか、というところ。

 ライセンス認定を受けることによって、危険と対処法を知ることができる。
 そして自己の責任のもと、自由に海に潜ることができるようになる。

 これをきちんと理解したい。

 もちろん、自由にと言っても認定されたルールやマナーに則った上での自由だ。しかし体験ダイビングのときには知りようもなかった世界を、自分たちだけで(もちろんガイドさんと一緒でもいいし、その海域を知り尽くしたガイドさんと一緒のほうがより一層楽しめるだろう)、より安全に、安心して見に行くことができるようになるということなのだ。

 ちなみに、この、自分たちだけで、というところに魅力を感じるか否か、というところが、日本人的ガイドダイビングスタイルと、欧米人的アドベンチャーダイビングスタイルの違いになってくるんだろうかなとも感じる。

 長くなってしまったので、そのお話はまた日を改めて。

 ライセンスを取って知識を身に着け、しっかり技術も磨いて安全に、たのしくダイビングを楽しむ人が増えてくれたらと、心から願う。