先日、ちょっと珍しい出来事に遭遇した。
時期はお盆。
ダイバーたちはベテランも初心者もこぞって海を目指し、ダイバーじゃない人も、海にはたくさんの人たちが訪れる時期だ。
私たちも、普段ならお盆の時期や連休などはあまり活発に行動しない方だが、今年は予定が偶然はまったこともあり、伊豆を東から南、西とぐるりと回って潜ってきた。
(勝手にキタナイツアーなどとビミョーなネーミングをしたりしていた(笑))
私たちの経験本数は大体50~60本くらいだっただろうか。
その海は経験本数制限があるようなちょっと上級者向けの海で、二人とも一応経験本数としてはクリアしてはいるものの、果たして無事に帰ってこられるのだろうかとどきどきしながら申し込みをしていた。
朝、現地につくと想像よりもずっと込み合っている。ごった返しているといってもいい。
さすがお盆だな!なんて、言いながら、駐車場もわずかに空いた端っこの隙間に押し込む。
本数制限のせいか、もうなんだか周りの人たちは全員ベテランに見えてくる。
うまそうな人たちばっかりだよどーするどーする…!
2人とも完全に雰囲気に押されてしまい、全然落ち着かない。
そいうこうするうちに全体でのブリーフィングが始まった。
私たちは、なんだかちゃきちゃきした感じの女性ガイドさんと、もう1組のカップル、それと電車できてあとから合流するという女性の、合計6人パーティとなった。
もう一組のカップルさんは、なんとなく話しかけるなオーラが出ていて、ちょっととっつきづらい感じではあった。が、逆にそれがベテラン感に見えてしまうのだから人間の心理は不思議だ。
あとから合流してきた女性は、家族をほったらかして千葉から4時間電車に乗ってきて潜るという、お母さんだ。
家に帰ればお母さんなのだろうけれど、船の上をビキニで歩く彼女はとっても気さくで、かっこいい女性だった。
さて、みんなのスキルレベルもわからない状態なので、何はともあれ潜るのだけど、船の上での所作を見ている限り、私から見ても、どうも、余り手慣れている様子には見えなかった。私はなんとなくちょっと警戒もしつつ、海の中では少し下がって全体が見える位置をとるようにしていた。
幸い、相方はガイドさんに完全にマークされていて(笑)、手を引かれていたのでここはもうある程度お任せしてしまおうと思っていた。
1本目は少し流れのあるところで、根につかまって周りのおさかなさんたちを眺めて無事終了。
陸ではあれほど不愛想だったカップルの女の子は、潜ったとたん人が変わったようにはしゃいでピースしたり彼氏に写真を撮らせたりしていて、その落ち着きのなさはお世辞にも経験のあるダイバーには見えず、大丈夫なのかな?と少し不安を感じつつも、何はともあれ1本目は無事に帰ってきた。
1本目が終わって一度ショップに戻るのだが、それにしてもこのカップルさん、笑顔がない。夏休みに恋人と(状況的にはそうなのだろうけど見ている限りどう見てもそうは見えないんだけど)ダイビングに来て、なんでそこまで笑顔がないんだろう…もう、不思議で不思議で…相方と一緒に、昨日の夜なんかあったんじゃないの?なんて話していた。
さて、そんなこと言っていながらの休憩を経て、2本目に向かう。
先ほどの1本目で、決して経験豊富とは言えない私が見ていても、失礼ながら彼らはそれほどスキルが高くないことが見て取れていた私は、若干の不安を感じつつも、当然ながら彼らにダイビングをやめさせる権利なぞ私にあるはずもなく、また、まだそこまでとは思うこともなく、2本目のダイビングが始まった。
全員無事にボートからのエントリーをし、深度を増していって、ダイコンを見ると19mほど。
大物が見られるというポイントへ向かう途中のことだった。
相方はやはり完全にガイドさんにマークされて手を引かれていたので、私は例によって少し後ろから全体の見える位置をとっていた。
カップルの男性の方が、少し遅れ気味かなー、ほんとに自転車こぎフィンキックをする人っているんだなー、と思いながら、泳いでいたところでそれは起こった。
突然、その男性が一瞬おかしな動きをしたかと思うと、ものすごい勢いで泡を吐きながらのどをかきむしり、垂直方向に犬かきをしながら一目散に浮上し始めたのだ。
なんだなんだなんだ!
エア切れか?バルブの開け忘れか?いや、ここまで来てそれは違う。エアもブクブク出てる。
急浮上を抑え込むか?いや、エア切れかレギュレーターのトラブルの可能性も消えてないからそれも危険だ。
なにより明らかにパニックになっているからうかつに近づいたら自分が危ない。
そもそも追いかけても追いつかないくらいの距離もあった。
体感的にはほんの1,2秒、状況判断にかかっていたが、考えても仕方ないし、彼はどんどん浮上していくし、前を行く他のメンバーはどんどん進んでいくし、とにかく知らせなければ!
今こそこないだ買ったこのダイブブザーの出番だ!
ぶぃい~~!
ぶぃいいいぃぃぃ~~!!
ぶぃぃぃぃぃぃいいいいいいいぃぃぃぃぃぃい~~~いいぃぃ!!!
振り向かねぇー!!
全く聞こえていない様子。
こりゃもうどうしようもない、必死で叫んだ。
思えば私自身も軽いパニック状態だったのだろう。
無我夢中で叫んでいた。
おーーーーい!!おーーーい!!!おおおおおおおおおおいいい!!!!!
実際は
んんんんんん!!んんんんん!!!んんんんんんんんんんんんん!!!!!
になるわけだが、これでやっとガイドさんが気が付いてくれた。
大慌てで戻ってくる。
見上げると彼はすでに視界から消えていた。
つづく。
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